Lean Baseball

No Engineering, No Baseball.

あえて、スクラムを「捨てる」勇気 - 「越境」のための言語化とプラクティス選び

DevLOVE Advent Calendar 2018、18日目のエントリーです.

と、同時に「Retty Scrum Meet up〜2018.12.18〜」でLTやったよ!っていう報告でもあります.

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別に釣りたいわけじゃありません(汗)

そんな話をこちらでしてきました.

retty.connpass.com

自分がどうやって「越境」してきたか(&これからどう「越境」するか)についてサクサクと書きたいと思います.

TL;DR

  • サービスの価値を高める、チームを良くする手法・プラクティスは必ずしも一つ(アジャイル・スクラムetc...)ではない
  • サービスやチームのフェーズ、メンバー次第であえてスクラムを「捨てる」のも一つの手
  • 「越境」とは、「挑戦する」勇気と共に、「やることをやりきる、やらなくていいことは捨てる」意志と行動力がメチャクチャ大事

おしながき

Who am I?(お前誰よ)

登壇資料

Rettyの中の人から、「喋ってよ」と依頼もらって何となく書いたらこんな話になりました.*2

言いたいこと

資料を書きながら、話しながら気がついたことです.

やることをやりきる、やらなくていいことは捨てる

越境する上で、私が一番大切にしている考え・価値観です

PyCon JP 2018でお話した「Pythonistaの選球眼(せんきゅうがん)」の最後に話した内容の繰り返しになりますが、

  • プロジェクトを進めたりするとどうしても「ブレる」「悩む」タイミングが出てくる(やる・やらない、作る・作らない、誰がやるetc...)
  • エンジニアリングそしてプロジェクトマネジメント(セルフマネジメント)はそんな「ブレる」「悩む」イベントと常に対峙し、「選択と決断」が連続的に発生する
  • 「選択・決断」をするためには「やらないことを決める」「やることを"集中"してやりきる」のが大切!

私が言語化にこだわる(≒選択・決断ルールを決める)のも、チームビルディングややるべきことに集中したのもこの考え方がすべての根底なのかもと改めて思いました.

「外から得た学びを、自分たちの状況に照らし合わせる」大切さ

みんなだいすき、カイゼン・ジャーニーの序章、図1-1の真っ先に書いてある内容そのままです.

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

私の発表の「言いたいこと」のすべては、一言でいうと「現場のDiff」でした.

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フェーズによってチームによってプラクティスはかわる = 現場のDiff

私自身がネクストベースCTOとしてやってきたことは、前のチーム(Rettyやリクルート、ベイカレント他)でやってきたことのdiffをうまく取ってたんじゃないかなと?と資料をまとめ、話しながら思いました.

それもこれも、それぞれの会社・チーム・プロジェクトで多くのチャレンジができたから気がついたのかな?と改めて思いました.

まずは言語化とチームビルディングを頑張ろう、プラクティスは万能ではない

このスライドに込めた思いです.

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プラクティスより先に言語化しようぜ、の図

分類、やりかた、やるべきプラクティスetc...これは個人の経験や得意不得意、好みの問題もありこれが正解ではないと思っています.

例えばスクラムは不確実性が高い、少数精鋭チームでも機能するかもしれない(≒してなかったのはスクラムマスターの私が下手くそなだけだったかもしれない*3)ですし、ユーザーストーリーマッピングは既存事業やリプレースなどでも存在価値を発揮するかもしれません(この辺は私自身経験無いので断言できないが)*4.

ですが、「プラクティス万歳」「ウォーターフォールダサいンゴwww今ならアジャイルだろJK」っていう「手段」「プラクティス」から入るのではなく、

  • そもそも一緒にやるチームの人たちと「仲間」になるのが先
  • 「仲間」になる、同じ「価値」を目指すには何より「言語化」大事

というのがここ数年の仕事やコミュニティ活動で気が付き、これらが円滑に行けば行くほど成功に近づく(≒プラクティスは適当でも案外なんとかなる)という学びもあったので、このようなまとめにしました.

何があっても泥臭く「越境」し続ける、「心理的安全」をキープしつつ

色々話したり、このエントリーにも書きましたが、結局の所「挑戦」「越境」し続ける、やり続けるための「心理的安全性」のキープが大切なのではと思っています.

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泥臭く越境し続ける自分とチームを作ることが大切(スクラム他、プラクティスよりも)

私自身は「好きな野球(のエンジニアリングとかデータ解析)ができる」「Pythonとか好きなもので開発できる」「寝るときは寝る、美味しいものはしっかり食べる」が自分のペースでできていれば常に「挑戦」「越境」し続けるだけの「心理的安全性」をキープできる自身があります.

が、チームメンバーは必ずしもそうとは限らない上、(やはりというかなんというか)野球・スポーツの世界は新しい事もあれば、古いしきたり(体育会系あっ(ry)的な事もあったりして、今までいた業界より「心理的安全性」をキープするのが難しい所も実感しています.

故に今年は、

  • メンバーや関係者に対して、どんな事があってもまずは「肯定」から入る
  • どんなに小さい事でも「称賛」から入る
  • チャレンジした人(特に未経験だったり不安だったりすること)をとにかく褒め称える

...といった、「雰囲気作り」「自分をさらけ出す」的な事をやりやすくするよう、注力しました.

結果は出ている所もあれば、まだまだな所はありますが幸いにもチームは自分がJOINした2月から変貌しつつあり、ようやっと言語化して話していいかな?って所まで来たので話として入れました.

ちなみに、単に称賛・褒める・肯定...だけでは肝心な「挑戦」「越境」にはつながらないので、

  • 否定や叱責をしない程度に「挑戦」を促す
  • ビビっている・不安になってる理由を察してサポートする
  • 最初の走り出しを一緒にやる

といったことも合わせて行いました.

来年以降も「越境」しつづけていくぞ!

今回の発表はほぼ「一人エンジニアチーム時代」の話でしたが、今はエンジニアが二人おり、これからも増やしていく予定です.

エンジニアや他の職能を持った人がふえ、チームが膨れ上がるとまた違ったやり方・アプローチが必要になってくるんじゃないかなと実感しています.

来年の今頃はもっと違うこと、例えば「スクラム最高ンゴwww捨てるとかクソワロタwww」ぐらいにテノヒラを334度ぐらいは回せるよう、「越境」し続けようと思います!*5

もっと知りたい人は...(参考書籍とか資料)

この辺の結論・経緯に至るまで学んだり実践した時に特に参考になった書籍など.

言語化の参考になるもの

この辺の影響を受けています、特に「アジャイルサムライ」「RUNNING LEAN」は個人的に外せません.*6

アジャイルサムライ−達人開発者への道−

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  • 作者: Jonathan Rasmusson,西村直人,角谷信太郎,近藤修平,角掛拓未
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Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

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  • 作者: アッシュ・マウリャ,渡辺千賀,エリック・リース,角征典
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あと、リーン・ブランディングは上級者向けですが読み応えあります(自分ブランドを作るのも立派な言語化*7).

リーンブランディング ―リーンスタートアップによるブランド構築 (THE LEAN SERIES)

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  • 作者: ローラ・ブッシェ,堤孝志,飯野将人,エリック・リース,児島修
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言語化の後は...

プラクティス選びや実際のストーリーはやはりカイゼン・ジャーニーかなと.

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

スクラムの実践はこの辺が名著で参考にしています.

SCRUM BOOT CAMP THE BOOK

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スクラム実践入門 ── 成果を生み出すアジャイルな開発プロセス (WEB+DB PRESS plus)

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  • 作者: 貝瀬岳志,原田勝信,和島史典,栗林健太郎,柴田博志,家永英治
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見える化はやはりカンバンで.

カンバン仕事術

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  • 作者: Marcus Hammarberg,Joakim Sundén,原田騎郎,安井力,吉羽龍太郎,角征典,?木正弘
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*1:3年前にとりました、来年確か更新なのでちゃんとやんないと

*2:ラスベガスに出張中、突然依頼が来ました→こういう話、久々にしたかったのでOKしました

*3:とはいえ、「3〜5人くらいの車の製造ラインでの最適化」というスクラムの起源(の一つ)から察するに、1〜2人ではあまりやる意味ないのでは?と最近思っています、それでもスクラムだ!っていう人、そのへんの思想とか教えてください(実践含めて).

*4:完全に捨てて作り直すならそりゃまあユーザーストーリーマッピングとかやるかもですが、それは既に「式年遷宮」という名の新規作り直しなのでは説が

*5:NHKって奴ですね(察し

*6:初出からだいぶ経ってますが今でもバイブルです

*7:このブログのちょっと昔のエントリーより.