2021年プロ野球が開幕して一ヶ月半くらい.
佐々木朗希がついに一軍デビューしたり, 伝統の一戦「巨人阪神戦」が昨日で通算2,000試合になったり, 日々話題に欠ける事無く楽しいですね.
日々流れてくるニュースも気になるとは思いますが,
贔屓チームを推してると「なぜウチのチームは強い(弱い)んじゃ?」って気になりますよね?
私の場合は地元である北海道日本ハムファイターズが最下位なのはなぜなのかすごく気になります.
野球は相手チームより得点を稼ぐことにより勝てるスポーツです.
もちろん投球や守備も同じぐらい大事なのですが, 点を取らないことには勝つことはできません.
というわけで,
- 全12球団で1打席以上立っている打者の「貢献度」を可視化し,
- 「誰が打線のキーマンか?」「足を引っ張ってる選手は誰なのか?」を明確にする
という試みを「公式記録として手に入るデータを元に」分析・可視化してみました.
あくまでもバットと走塁の貢献のみで, 守備は度外視していますが, なにかの参考になれば幸いです.
TL;DR
- 阪神, 巨人, ソフトバンクの得点力がエグい
- 阪神佐藤, DeNA牧の貢献度がヤバい
- リーグ最少得点チーム, 方や選手起用が少なく方や選手起用が多い
おしながき
今回の分析アプローチ
今回の分析は,
- 純然たる「打者の攻撃力」を端的に表す「OPS」
- 打者の貢献度を「得点」に置き換えて表す「wRAA」
この2つを用いて行いました.
それぞれサラッと解説します.
OPS
プロ野球でもすっかりメジャーになった打者の指標です.
OPS(オプス、オーピーエス)は On-base plus slugging の略であり、野球において打者を評価する指標の1つ。出塁率と長打率を足し合わせた値である。
野球好きの方にはあんまり説明がいらない指標かもですね笑.
安打や四死球による出塁能力(出塁率)と, 一つでも先の塁に進む(長打を打つ)能力(長打率)を足し算して並べることにより, 「打者の攻撃能力」を端的に表す指標となります.
これはホント使いやすくて,
- OPSが.900超えはバケモノ
- .800以上は優秀で強い
- スタメンは少なくても.750前後は欲しい
- .700未満はスタメンで出すべきかを見直すべき
ぐらいに分けることができるので慣れて来たら直感的に見れると思います.
なお, 数字の計算は比較的楽です&最近はどのスポーツサイトでも掲載されてるのでおなじみの数字かなと思います.*1
wRAA
OPSが結構完成度高い指標なので, 「OPS順に並べれば誰が強いかわかるのでは?」とも思えちゃうのですが,
OPSはあくまでも「打者のプレーの質を表す指標」であり, 「実際の試合で何点分の価値を出したか?」を出すことができません.
- OPSがメッチャ高い選手でも, 故障がちでそもそも打席が少なかったら得点に絡む機会は少なくなる
- OPSが.900でも年間90試合ぐらいしか出れない選手 VS OPSは.800ほどほどだけど全試合(143試合)出場する選手だと後者の方が貢献度高そうじゃないですか?
など, 「そもそも試合にちゃんと出ているか?」がかなり重要となってきます.
野球の統計学「セイバーメトリクス」ではこれらの課題に応えるため,
(出塁能力 + 進塁能力) / 出塁機会
というモデルを元に得点力を出す「RC(Run Created)」- 1打席あたりのパフォーマンスを評価し, これを得点として置き換える「wRAA(Weighted Runs Above Average)」
という方法で評価することが多いのですが, 今回はセイバーメトリクスでよく使われるwRAAで評価することにしました.
なお, この辺の考え方で気になる人は...このブログでは説明しきれないので過去のエントリーをご覧いただけると嬉しいです.
表の読み方
というわけで今回はOPSとwRAAをこんな感じで可視化しました.
表の読み方ですが,
- 上にいる選手が得点に貢献している選手, 真ん中あたりは平均, 下にいる選手が得点獲得で足を引っ張っている選手.
- wRAAの降順で並べています. OPSは参考数値的に見るとわかりやすいかも.
- wRAAは「0が平均的な選手」という見方で, マイナスもあり得ます.
とだけ頭に入れてもらえれば理解がしやすいかと思います.
12球団打線パフォーマンス可視化
というわけで早速見ていきましょう.
セ・リーグ→パ・リーグの順位順で記載しました.
参考数値として, 5/15終了時点のチーム得点・失点・得失点差も合わせて記載します.
阪神
チーム成績: 179得点・119失点・得失点差 +60
セ・リーグ最強打線かつ, 失点もリーグ最小とまさに猛虎が過ぎますね(こなみ)
まず目につくのが佐藤輝明凄すぎ.
OPSで言えばチーム4位(スタメン組に限ると2位)なのですが, ちゃんと試合に出続けているのでしっかり得点価値を出してるのがわかります.
今回は集計の関係で守備力・守備位置は無視していますが, 二遊間を守る糸原と中野, 捕手の梅野, 三塁の大山(+佐藤), ライトの佐藤と守備ポジション的に重要な位置の選手が得点稼いでるのが凄いなと思いました.
あら捜しを敢えてするなら近本がスタメンとして微妙(とはいえ+の貢献度)な数字なのと, 控えの山本・木浪が察しって感じなところでしょうか, あとロハスJr.(ry
巨人
チーム成績: 169得点・136失点・得失点差 +33
坂本が抜けて痛い巨人ですが, FA組の梶谷含めて「試合に出てる人がしっかりパフォーマンスを出している」傾向で美しいなと思いました.
ウィーラーとスモークの両助っ人に岡本和真と頑張ってるしほかも合格点.
敢えて突っ込むなら正捕手やるなら大城もっと頑張れ.
ヤクルト
チーム成績: 152得点・155失点・得失点差 -3
いかにもヤクルト感ある得失点差.
点は取るけど取られもする, 的な.
村上・山田両人が引っ張ってるのもありますがオスナ・サンタナ両助っ人もしっかりやってるし, 最近2番でよく見てる気がする中村もいい感じ. 捕手で得点能力高いのはそのまま他チームへの差別化にもなるので.
下の方を見ると青木さんが波に乗れてない感じするのと内川や坂口といったベテランかつバットで結果出すべき勢が微妙なのが気になります.
広島
チーム成績: 116得点・135失点・得失点差 -19
菊池と鈴木が引っ張ってるので得点上げてるのかと思いきや, 116得点(リーグ5位)はちょっと意外.
坂倉〜松山あたりの「出たり出なかったりする」勢がプラス, 出場機会ある田中・堂林がメッチャマイナスとチームの健康状態そのものなのかなと察しました.
この数字だけ見ると小園をガンガン使えってことなのか🤔
しらんけど.
中日
チーム成績: 109得点・125失点・得失点差 -16
得点力リーグ最下位.
毎年安定している大島さん, 突然打ってる?木下さんが引っ張ってあとは(ry
OPS .700台の選手が引っ張ってるっていうのはまあまあ深刻な気が...
もっとも失点も少ないチームなのでカラーと言えばそれまでかも, 京田はおそらく守備の貢献が大きいはずなので(数字見てませんが).
なお, 選手の入れ替えが少ないのかこのグラフ上では19名しかいませんでした(今回調べたチームでは最小).
DeNA
チーム成績: 148得点・203失点・得失点差 -55
こちらは中日とは逆に失点がメチャクチャ多くて得点がほどほど.
佐野, 宮﨑が安定した貢献をしている中ルーキーの牧がいいですねー
そして数字を見る限りオースティンの合流が早ければと思える内容.
マイナスの選手も多いですが, このチームに限ると得点云々より失点を人並みにすることが先かもって思いました.
ソフトバンク
チーム成績: 178得点・153失点・得失点差 +25
安心と信頼のホークスは柳田・栗原・グラシアルが元気.
あと甲斐って毎年バッティング良くなってません?つよい.
上林・中村含めて外野・一塁が点を取れてるのがいい感じに見える.
マッチ・デスパイネに衰えが見えてそうなのと, 今宮・周東がアレなのが気になる.
楽天
チーム成績: 160得点・149失点・得失点差 +11
今回のグラフ的に面白いと思ったチームの一つ.
スタメン勢がプラス, 控えがマイナスとすごくわかりやすい結果笑
クリーンアップ + 上位打線がそのままwRAAランク上位なので的を得た采配をしていると言えそう.
スタメンで大きなマイナス出してる小深田はもっと頑張れ.
ロッテ
チーム成績: 184得点・157失点・得失点差 +27
ここも楽天と同じでスタメンと控えの差が明確.
面白いと思ったのが鳥谷で, 数字を見たら出塁率がめちゃくちゃ高くて持ち味を出してるなと.
個人的には3年目の藤原恭大がこの位置にいるべきじゃないと思ってるのでもっと頑張ってほしい.
オリックス
チーム成績: 161得点・160失点・得失点差 +1
相変わらずの「吉田正尚個人軍」状態と思いきや, 杉本がキャッチアップしてきて少なくとも軸が増えた印象.
びっくりしたのは得点力が思ったより高いなってのと, ピッチャーがいいチームという印象だったのですが失点も多いなと笑
これは次のブログのテーマにしていいかなと思えてきました.
西武
チーム成績: 135得点・148失点・得失点差 -13
山賊打線も今や昔, なんか波に乗り切れてないな感を感じる成績.
ほとんどの選手がマイナスなのが驚き, 外崎の穴が...
日本ハム
チーム成績: 112得点・163失点・得失点差 -51
言うまでもなくリーグ最少得点, 最低な得失点差.
ワンボーロンって契約最終年でしたっけ?
「契約最終年に爆発する」というある種のプロ野球あるあるな成績に草
そして相変わらず近藤健介が強い, 今年は長打もめちゃくちゃ出るので嬉しいです.
...が, 例のコロナの件でスタメンが試合に出られない・そもそもそれ以前から開幕以来絶不調というのが浮き彫りになるグラフでどこからコメントすべきか悩みます.
あと選手起用が29名とめちゃくちゃ多かったです.
確かなのは中田翔さん, 杉谷さんは活躍した時の印象はヤバいですが数字にするとお察しです.
頼むもっと頑張ってクレメンス.
結び
今回は得点能力を基準に可視化して遊んでみました.
リーグ最少得点のチームの傾向が,
- セ・リーグ最小の中日はほとんど選手が変わってない説
- パ・リーグ最小の日ハムは色んな選手が打席に立っている(コロナの影響もあるが...)
とほぼ選手起用の好みやろっていうことがわかったり, セ・リーグのルーキー野手で輝いている佐藤・牧の両名がほんとにいい貢献してるなとわかったり学びが多かった気がします.
もっとも, 開幕してまだ折返しにも達していないので同じ分析を来月の今頃にやると結果が変わりそうな予感もしています.
また, (最初に断ってるとはいえ)守備力・投手力を無視した分析なのでそこにも穴があります.
次回は...投手とか見てみますか, 引き続き野球を楽しんでいきましょ.
参考資料
手前味噌ですが, こんなのまとめてます&今回色々と参考にしました.
また, このエントリーは4年前にやったこれの現代版でもあります.