元エンジニアリングマネージャー&コンサル会社のマネージャー, 現在はSRE組織の立ち上げをしている1人目マン*1です.
本エントリーは今月発売となった「エンジニアリングマネージャーお悩み相談室」を読んだので感想文的なアレを共有します.
密かに楽しみにしていてKindleと紙両方買って読みましたが最高みありました, 迷ってる方は買いですよ!
なお, 執筆した@ar_tamaさんは現職LayerXの同僚ではあるものの,
- 事業部もチームも異なるのである意味当事者ではない, あくまで中立的な立ち位置での読書感想文です*2.
- 前述の通り, 書籍そのものは紙・Kindle共に自分で購入して読んでいます.
- 本ブログの執筆で補助的に生成AI(Cursor)を使っているものの, 感想面はすべて私の言葉です.
という前置きは一応しておきます&サインありがとうございました*3.
サインをもらいました(補足・同僚です笑) #devsumi pic.twitter.com/AkDdU7n61p
— Shinichi Nakagawa / 中川 伸一 (@shinyorke) 2025年7月18日
- TL;DR
- 我思う「対象読者」
- 本の構成と感想
- 個人的にグッときたポイント
- 対話・コミュニケーションへの深い洞察
- 結び
- 余談1「デブサミのセッションに参加してみた」
- 余談2「shinyorkeのマネジメント的な価値観」の言語化
TL;DR
「エンジニアリングマネージャーお悩み相談室」は, エンジニアリングマネージャー1年生からこれからマネージャーになる人まで, マネージャーの為の集合知として非常に読みやすい良著でした.
我思う「対象読者」
書籍の紹介ページでは,
- エンジニアリングマネージャーになりたての方
- マネジメントのよりよい取組み方を知りたい方
- マネージャーとしての生き方・働き方に不安がある方
以上が対象・想定される読者だと記載されていました.
私shinyorkeが考える「エンジニアリングマネージャーお悩み相談室」の対象読者ですが, 通しで読んでこのあたりが対象かなと思いました.
- 現役のエンジニアリングマネージャー
- エンジニアリングマネージャー1年生
- これからマネージャーになる予定の方
- マネージャーのキャリアを目指す若者
SIerやITコンサルから事業会社にキャリアチェンジを検討している人(特にマネージャー)
1-4までは異論無いと思います.
ポイントは5. SIerやITコンサルから事業会社にキャリアチェンジを検討している人(特にマネージャー)
で, 「自社でプロダクト・サービスを持つ会社とSI/ITコンサルを生業とする会社」のマネジメントの違いを知る意味でも読んでおいたほうが良さそうです.
私個人は上記のnoteのような言語化をしたのですが, この言語化とは違った意味での学びを「エンジニアリングマネージャーお悩み相談室」から得たのでおすすめさせてもらいました.
本の構成と感想
「エンジニアリングマネージャーお悩み相談室」を読んだ感想&見どころ的な紹介をさせてください.
- お悩み相談形式の構成
- 集合知としての価値
大枠だとこの2つが見どころな感じがします.
お悩み相談形式の構成
この書籍の最大の特徴は, タイトルにもある通り「お悩み相談室」という形式を取っていることです.
以下は翔泳社サイトから引用した目次の全容ですが.
【目次】
Part1 エンジニアリングマネジメントって難しい
チームの目標って、どうやって立てたらいいの?
チームが順調なときは、自分は何をしたらいいですか?
どうやったら自律的なチームになりますか?
メンバーに仕事を振るのが苦手です....
Part2 チームの向きを揃えるって難しい
メンバーの向きがバラバラで目標を達成できません
環境の変化でチームの方向性を見失いました......
チームと経営方針のすれ違いに悩んでいます
雰囲気はいいけど目標は達成できませんでした
Part3 ピープルマネジメントって難しい
メンバーにまったく共感できないんですがマネージャー失格ですか?
ネガティブなフィードバックができません
メンバーの希望とズレたアサインメントをしたいのですが......
メンバーの成果を周囲に認めてもらえません
Part4 事業目線を持つって難しい
組織・事業のことまで視野を広げるには?
採用活動って何から始めたらいいですか
Part5 EMのキャリアって難しい
エンジニアリングの勘が失われるのが怖いです
他職種のマネジメントをすることに。何から始めたらいい?
経営視点って、どうやって身につけたらいいの?
エンジニアリングマネージャーが実際に抱える悩み, 本当に相談したいようなに対して, 回答や背景論となる考え方・スタンスを提供するスタイルになっています.
この形式により, 読者は自分の状況に照らし合わせながら読み進めることができ, 非常に読みやすい構成になっています.
一般的なマネジメント本のように抽象的な理論を並べるのではなく, 具体的な悩みとその解決策を示すことで, 実践的な価値を提供しています.
集合知としての価値
著者1人の意見というより, インタビューの方を含めた「エンジニアリングマネジメントの集合知」として言語化が上手く出来ていると思います.
書籍内のインタビューや, 書籍内で引用・紹介している考え方・書籍など含めて, 「ちゃんと実践しているエンジニアリングマネージャーだからこその知見」という感じでとても良くまとまっています.
個人的にグッときたポイント
更に個人的にグッときた, 「読んで良かった」ポイントはこちらです.
- 難しいテーマの言語化
- エンジニアリングマネージャーならではのTips
- 対話・コミュニケーションへの深い洞察
難しいテーマの言語化
この書籍で最も価値があると感じたのは,
エンジニアリングマネージャーが直面する「直接言いにくい感じの難しい」テーマを上手く言語化していることです.
エンジニアリングマネージャーというロールは, 技術者からマネージャーへの転換期に多くの曖昧で言語化しにくい課題に直面します. これらの課題は「なんとなく分かるけど, うまく説明できない」という状態で, 多くのマネージャーが頭を悩ませているものです.
書籍の序盤で「必要なのは, エンジニアの帽子を脱ぐ覚悟」
といういいお話があるのですが.
これは多くのエンジニアリングマネージャーが感じているが言語化できなかった感覚を, 「マネージャーとして何でも貪欲にやってみる」
という文脈でいい感じに背中押ししています(気になる方はマジで読んでほしい).
また, 「MustとWillが近いところに目標を設定する(Canは動き出してからギャップを埋める側面が大きい)」
というTips・考え方の紹介もあります.
これはエンジニアリングマネージャーとして実際に目標設定向き合ってるからこそ, 重要なポイントを簡潔に表現していると思いました(かつ, 実はここがSIerやITコンサルから事業会社にキャリアチェンジを検討している人(特にマネージャー)
な方がギャップを感じやすいポイントと思いました*4).
個人的にも「Canはストレッチ目標的に後で埋めればいいやろ」ぐらいにボンヤリ思ってたのですが, これはマジでいい言語化されてるなと思いました.
また, 「メンバーに対して『どう作るのか』を細かく指示することは, マイクロマネジメントの悪例」
という表現は本当に言いにくいことをちゃんと言ってくれた感あってよかったです(かつ, ここもSIerやITコンサルから事業会社にキャリアチェンジを検討している人(特にマネージャー)
な方がギャップを感じやすいポイント*5).
これらの言語化は, 単なる抽象的な概念ではなく, 実際のマネジメント現場で直面する具体的な課題に対する実践的な解決策として提示されているため, 非常に価値が高いと感じました.
エンジニアリングマネージャーならではのTips
エンジニアリングマネージャー特有の課題に対する具体的なTipsも充実しています.
- 1on1が雑談にならないようにガイドラインを設ける*6
- Will Can Mustの組み方(先ほど紹介した内容)
触れにくい話題はワークショップが効果的
などより突っ込んだ内容
これらのTipsは, 理論的な説明だけでなく, 実際の現場でどのように実践するかまで具体的に示されているため, 読んですぐに活用できる内容となっています.
対話・コミュニケーションへの深い洞察
また, 「お悩み相談室」とタイトルにあるだけに, 「対話」「コミュニケーション」についてしっかり書かれている印象があります.
- 共感の本質的な理解
- フィードバックの真の目的
この辺も個人的には結構推しのポイントです.
共感 = 相手の立場に立つ
ある章に書かれていた「共感」の部分の言語化が良かった.
共感とは単に相手の気持に同調することではなく, 「相手がどんな立場や考えかたをしているかを想像し, 理解しようとする姿勢を示すこと」
これは主にピープルマネジメント的な文脈を含んでいますが, ITコンサルのマネージャーがよくやる(私もよくやる)「Client Facing(お客様との対話・プロジェクト推進)も同じようなところがあり, 本当にいいところを突いてると感じました.
「相手の立場に立つ, そして良い方向に持っていく」というところを見事に表していると思いました.
フィードバックの言語化
(私を含めて)多くの方が苦手な「フィードバック」についてもいい言語化がされていました.
フィードバックは決して相手を責めるための行為ではなく, チームの成果を最大化するうえで必要なコミュニケーション
この一言はシンプルにフィードバックの本来の目的を明確にしていると感じました.
メンバーが少し道を外したと感じても, すぐに軌道修正に介入しないこと
タイミングに関してもシュッといい言語化がされていて印象的でした.
結び
以上「エンジニアリングマネージャーお悩み相談室」を読んだので感想文的なアレでした.
エンジニアリングマネージャーというロールで事業貢献する方全てに届いてほしい良著であるといえるでしょう. 特に, 技術者からマネージャーへの転換期にいる方には, 必読の一冊だと思います.
最後までお読みいただきありがとうございました.&関連する余談コンテンツも用意したのでそちらもご覧ください.
余談1「デブサミのセッションに参加してみた」
デブサミ2025夏のパネルディスカッションに参加しました*7.
個人的には読破する直前のちょうどいいタイミングだったので良かったです.
感想こんな感じです.
ロールモデル問題なぁああ #devsumiA
— Shinichi Nakagawa / 中川 伸一 (@shinyorke) 2025年7月18日
ふむふむ #devsumiA pic.twitter.com/PhJy2TLZ0K
— Shinichi Nakagawa / 中川 伸一 (@shinyorke) 2025年7月18日
散歩1on1は真似したい #devsumiA
— Shinichi Nakagawa / 中川 伸一 (@shinyorke) 2025年7月18日
百点満点が当たり前に学習されすぎて、不確実性が高いエンジニアリングと相性悪くて苦労する話わかる
— Shinichi Nakagawa / 中川 伸一 (@shinyorke) 2025年7月18日
#devsumiA
散歩1on1はめっちゃ真似したい.
余談2「shinyorkeのマネジメント的な価値観」の言語化
ちょうど2年前にこのブログで言語化していました.
*1:詳細は別ブログで書きます(こっちか会社かわからんですが)予定ですが, デブサミ2025夏でそんな話をしました.
*2:ご一緒しているのは技術広報的な全社の営みぐらい. 余談ですが我々は8/1開催「Bet AI Day」の司会を務めさせてもらいます🎙️
*3:自分がほぼリモートなのでオフィスで会うことがほぼ無いのでデブサミの現地でもらいました.
*4:何故なら私がここで苦しんだ経験があるからです
*5:何故ならマイクロマネジメント前提の働き方になる可能性があり, ここに大きなギャップができるからです.
*6:これはアジェンダやゴールを決めようという当たり前の話なのですが書き方が上手でした
*7:会社的にはSNS用の写真撮影などそのミッションもあり(小声)