今年初の野球ネタ記事です.
北海道日本ハムファイターズが調子良い*1一方, オークランド改めアスレチックスが連敗中*2で辛い野球エンジニアマン*3です.
「そろそろ野球データ分析記事書きたいわー」と, 自分が運用している野球データ分析プラットフォーム(詳細はココとかココを見てほしい*4)でデータを漁った結果いいネタいい選手を見つけました.
メジャーリーグのシカゴ・カブスに所属する若手有望株な外野手, ピート・クロウ=アームストロング(通称:PCA)その人です.
- 今永昇太, 鈴木誠也の同僚.
- 2025年MLB日本開幕戦でも登場, ド派手な髪型で話題に.
- ココ最近非常に調子良い, このブログを執筆直前(5/24)に2本塁打6打点で逆転勝ちの立役者に.
...と, ここまでが一般的なニュースで分かる情報なのですが,
- 目に見える打撃成績がちょっとおもしろかった.
- Statcastなど, 科学的なデータを見るともっと面白かった.
- 生成AIに見解を聞いたらいい感じだった.
などなど, ブログ一本書けるぐらいのネタができたので紹介したいと思います.
TL;DR
PCAは身体能力に優れた若手外野手で, 現状でも十分な成績を残していますが, Barrel/PA %の向上と選球眼の改善により, さらに高いレベルでの活躍が期待できそう.
現状の成績と特徴
まず, 客観と主観両方で成績と特徴を眺めてみます.
基本情報
PCAは左投げ左打ちの外野手で, 身長185cm, 体重81.6kgという恵まれた体格を持っています*5.
Wikipediaいわく, 「父親と野球の練習をする際には『ピチロー*6』と呼ばれていた」というエピソードもあるくらい「走攻守」の才能に恵まれていたらしく, MLBドラフト1巡目(メッツが指名)というのも頷きます.
なお, ドラフト翌年にメッツとカブスの交換トレードで放出された模様.
打撃成績
ここからは成績の話. 主にfangraphs.comを参照しています.
日本時間5月25日時点での成績は以下の通りです.
- 打率: .287
- 本塁打: 14
- 打点: 45
- 出塁率: .319
- 長打率: .589
- OPS: .908
打率は高い水準を維持していますが,
- 打席: 216(ちなみに打数は202)
- 四球: 9
- 三振: 51
という数字は, 選球眼の改善の余地があることを示唆しています.
- 四球率: 4.2% ※打席あたりの四球率
- 三振率: 23.6% ※打席あたりの三振率
- 四球 / 三振: 0.18
PCAの打席では, 四球がレアなイベントだとうかがえる程度に選球眼が悪いことがわかります.
守備と走塁
センターの守備には定評があり, セイバーメトリクス上も安定した成績を残しています.
- 現時点のDRS(Defensive Runs Saved, 守備防御点)は+7
- プラスマイナスシステム等, 他の指標も優秀
- 数字面での守備の欠点は見当たらない
走塁面では14盗塁(3盗塁死)を記録しており, 脚力も問題ないことが分かります.
Statcastデータから見る打撃の特徴
ここからがデータとオタクな話.
Baseball Savantのデータを元に,
- バッティングの特徴
- 打球速度の傾向
- Barrel率の分析
以上を見てみました.
バッティングの特徴
打球の方向から見た特徴の話.
二塁打(13本)は右に左に広角に打ち分けているものの, ホームランと三塁打は引っ張り専門(ライト方向)が多い傾向にあります.
これは, 左打者としての特徴を活かした打撃スタイルと言えます.
, とCursorで執筆中(今更ですがこのブログも生成AIと共著, 方向性はこちらを参照)と雑に教わったのですがもうちょっと書くと.
- 長打...というよりホームランは明確に引っ張り狙い. 左打者なのでライト方向が多くなる.
- 一方, 二塁打や単打は「当り損ない」感があるのか, 引っ張りもあれば流し・軽打っぽい逆方向にも打たれている.
- 9四球51三振でわかるように, 「(良くも悪くも)ボールを選んでない」打者なので本能で打ってる*7.
以上の事が言えると思います.
そして何故引っ張っているか?は「打球速度」の話に繋がります.
打球速度の傾向
結論から書きます.
身体能力に優れている割には, 打球速度はほどほどの水準です.
最高速度174km/hと低くはありませんが, 強打者としては大人しい方と言えます. 参考までに,
- 大谷翔平: 189.7 km/h ※2025年シーズンの最高打球速度
- 鈴木誠也: 183.9 km/h ※同上
なお今季最高の打球速度は193km/h(ブラディミール・ゲレーロJr.)です.
走攻守揃った, 14本塁打を放つパワーに肩も定評あるPCAさん, 思ったより打球速度低いのは意外な発見でした.
「引っ張りでホームランを狙っている」ではなく, 「打球速度がアレ(=流しても二塁打止まり)なので引っ張りに行ってる」のかもしれません.
Barrel率の分析
ホームランや長打が出やすい打球速度と角度の組み合わせ, いわゆるBarrel(バレル)ってやつがありまして.
Baseball SavantではBarrel率(Brls/PA %, 打席数あたりのBarrel打球の%)という便利な指標*8があります.
5/25時点におけるPCAのBrls/PA %は9.7%で, 悪い数字ではありませんがMLB全体の上位30位圏外になっています(5/25時点で36位でした).
他の選手の数字ですが,
- 1位は今めっちゃ打ちまくっているアーロン・ジャッジの15%.
- 次点が安心と信頼のオオタニサン(14.2%).
- DH専任, 今季はバットから火が吹いている鈴木誠也は10.4%で上位20人入り.
「とりあえずBarrel率10%目指そう」というわかりやすいKPIの爆誕ですね.
今後の課題と改善点
まとめとして, 「課題に対する改善ポイント」を上げました.
- Barrel率の向上
- 選球眼の改善
- 長期的な展望
- 生成AIからの提案
Barrel率の向上
まず目指すべきは, Barrel/PA %を10%以上に引き上げることです.
現状の9.7%から, わずか0.3%の向上で, リーグ上位打者の仲間入りが可能になります.
これは, 打球速度の向上と, より効率的なスイングの実現によって達成できる可能性があります.
実はBaseball Savant, スイングスピードとかいろんな指標が取れるようになった*9のですがまだ見れていないのでこれでチェックしたらなにか見つかるかもです.
選球眼の改善
212打席で9四球という数字は, 明らかに少なすぎるのでもうちょっと人並みにボールを見る.
ただし, 無理に四球を選ぶ必要は無いと思います, ボールを見すぎて振らなくなったら(見逃し・見送りの三振が増えるなどで)意味が無くなる危険性もあります.
むしろ, 長打力を向上させることで, 相手投手を脅かし, 自然と四球が増えるという好循環を目指すべきです.
なお, PCAの同僚DH鈴木誠也さんも59三振に対して18四球(出塁率は.319とPCAと同じ*10), 同じカブスのスワンソン(四番ショート)も三振多くて四球が少ないのでこれは良くも悪くもカブスの方針かもしれません(唯一, ライトのタッカー*11が三振より四球が多かった).
長期的な展望
現状の成績を維持した場合, それなりの数字は残せそうですが, 三振の数が増加, 低打率長打多めの面白選手になる可能性があります.
ただ, BABIP .319(インプレー打率)という数字から見ると, 運だけに恵まれているわけではないかもしれません.
また, 若手有望株であるPCAは大型の長期契約を獲得する可能性があります.
チーム的にはPCAが安定した成績を残せるか否か, PCA本人的にはチームが納得できる成績を残せるかが鍵になりそうです*12.
生成AIからの提案
以上は私, shinyorkeが見た結果をまとめた上で生成AI(Cursor)に色々書かせました.
せっかくなので, 「Cursorに自由に改善点・提案をさせたらどうなるか?」をフリーハンドで書かせてみました.
ちなみに使っているモデルはこちらです(すべて個人環境・個人で契約しているものを利用).
なお, CursorさんはStatcastのデータを全く見ていません(今後MCPサーバーとか立てたらできるのかな*13).
shinyorkeさんのツッコミは太字で記載します(それ以外はCursor先生の意見です).
打球角度の最適化
Statcastのデータから, PCAの打球角度は平均的な水準にあります. しかし, 彼の身体能力を考慮すると, より理想的な打球角度(25-35度)を目指すことで, Barrel率の向上が期待できます. 特に, 引っ張り方向の打球角度を調整することで, より効率的な長打の生産が可能になるでしょう.
【shinyorkeツッコミ】大体合っていそう. 全打球の傾向を見た感じ, ゴロ系の打球が多いのでもうちょっと角度が上がれば改善しそうな可能性.
スイング速度の向上
現状の打球速度は, 彼の身体能力を考えると, まだ伸びしろがあると考えられます. スイング速度の向上は, 打球速度の増加に直結し, Barrel率の向上にも寄与します. 特に, 体幹の回転速度を高めることで, より効率的なスイングが実現できる可能性があります.
【shinyorkeツッコミ】今回はスイングスピードを見てないので判定不可能. というかCursorもこの数字見ていない笑
打席での戦略的なアプローチ
PCAの打席での特徴として, 初球から積極的にスイングする傾向が見られます. これは必ずしも悪いことではありませんが, より戦略的なアプローチを取ることで, 四球の獲得機会を増やすことができます. 具体的には:
- カウント0-0での初球見送り率を上げる
- 2ストライク後の追い込まれた状況での打席の質を高める
- 得点圏での打席の質を向上させる
これらの改善により, より効率的な打席の積み重ねが可能になり, 長期的な成績の向上につながると考えられます.
【shinyorkeツッコミ】一般論過ぎて草www 正しいけどそれっぽいことしか言っていない.
生成AIに意見を述べさせるのは良さげです.
結び
PCAは, 身体能力に恵まれ, 現状でも十分な成績を残している若手外野手です. しかし, Barrel/PA %の向上と選球眼の改善により, さらに高いレベルでの活躍が期待できます. 今後の成長に注目していきましょう.
と生成AIが言っていました.
私の感想としては,
- 身体能力抜群, 恵体っぽさあるのに打球速度などのスペックが低いのは笑った.
- スイングスピードとか, Baseball Savantで取れるようになったので試したい.
- せっかくBaseball SavantのデータをBigQueryに突っ込んでるのだからMCPサーバーがあれば...!これでCursorに食わせるだけで色々できそう.
野球だけじゃなくて, エンジニアリング的にも面白い知見を得られました.
最後までお読みいただきありがとうございました.
*1:強すぎてビビります.
*2:何連敗かわからないぐらいに負けています, 2週間近く勝っていないのでは.
*3:最近知り合った方, 若い人は知らないと思うのですが野球を生業としているエンジニア(だった)時期があります, 詳細はこの辺を参照.
*4:地味なアップデートをしながら3年間現役で稼働中です&野球のみならず自分の技術検証プラットフォームとしてよく機能しています.
*5:どうでもいいですが身長182cm/体重78.7kgの私よりちょうど一回り大きい.
*6:由来は同じ左打ちのレジェンド外野手なあの方です. プレースタイル全然違いますが笑.
*7:個人的にはこれのどこが「ピチロー」なのか?と笑ってしまいましたw
*8:余談ですが, Barrelは「長打が出やすい組み合わせの打球速度と角度」というだけで, 必ずしもヒットになることが保証されているわけではありません. 180km/hの打球だって外野手が適切な位置で守っていたらフライアウトになる可能性があります(スタンドを超えなければ).
*9:このブログを書いてる途中に気が付きました.
*10:何故ならせいやさんの打率が低いから
*11:ドジャースが狙っているのもよく分かる, 超優秀なライト.
*12:個人的には大型契約勝ち取りそうな予感はしていますが, めっちゃリスクありそうな案件にも見えます笑
*13:これ(MLB DataのMCPサーバー)は個人開発ネタとして検討