読了から二ヶ月経過して今さら感もありますが、すごく良い本でしたので感想を.
倉貫さんの新著、「管理ゼロで成果はあがる」です.
管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう
- 作者: 倉貫義人
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2019/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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TL;DR(感想をひと言で言うと)
組織だけでなく、「自分を変える」「自立する」という視点で「自分ごと」として読むと最高だ!
と感じました.
自分および組織を「自分ごと」として変えたい方は絶対読んでほしいと思っています.*1
おしながき
【感想】管理ゼロで成果はあがる
倉貫本の追っかけです(最初に断っておく)
このエントリーの「大切」な前提条件です笑
「納品をなくせばうまくいく」、「リモートチームでうまくいく」の前二作を通じて、
- アジャイル的な思想・組織アプローチの実践例
- 「なぜ、それ(納品をなくす・リモートチームでやる)をやるのか?」という発想や背景そのもの
- これらの学びを「自分ごと」として、今日明日からどうやって活かすか? ←これが一番重要*2
というのを学び、少しずつではありますがこれらを参考に自分なりに実践とかもしてきました.
実践例はいくつかあるのですが、「自分の考えや思想を発信する」という視点でブログログを書いてるのは倉貫さん(&その他の強いエンジニアの人たち)の影響が多分にあると思います.*3
全体的な感想
ソニックガーデンさんの実践と、その実践に纏わる背景(課題とか仮説および思想そのもの)を交えた上で、
- 「自分ごと」として、今日明日からでもできること(例:抱え込まずさっさと相談、タスクばらし、セルフマネジメント)
- 「自分+組織」として、考え、自走しながらやっていくこと(例:ザッソウ、業務ハック)
- 「働き方そのもの・理想の組織 #とは 」的な視点で少しずつ磨いていくもの(例:ホラクラシー、独創的な働き方など)
というのがバランスよく書かれていて、
- 自分ひとりの働き方・生産性をカイゼンしたい
- チーム・組織をより良くしていきたい
一見すると相反するようなニーズ(実は相反しないんだけど*4)に応えているバランス良い本だなあと思いました.
自分を変える
自分個人の生産性・働くスタイルを再考し、変貌させるヒント・明日からでもできることが多くて面白いと思いました.
いくつか上げます.
抱え込まずさっさと相談
文脈的には「エンジニアチームとして、どうやったら相談しやすい空気作れるかな?」という視点でここが刺さりました.
中途入社した人の最初の壁は「相談しにくい」ということです。プライドもあるでしょうし、忙しそうなメンバーの時間をとることに気がひけるというのもわかります。
しかし、そこはさっさと相談したほうがチームで見た生産性は高まります。
※「管理ゼロで成果はあがる」より引用(以下、引用は断りなければすべてここ)
個人的には中途入社の人じゃない人(生え抜きやバイトさんなど)も十分当てはまるかなと思いますが、「躊躇して相談できない」のが「成果をあげる」ことを阻害してる要因かつ、「変えようと思えば自分から変えられること」だなと思いながらここを読んでました.
とはいえ、これは組織・チームの手伝いも必要な所なので、チームを扱う側の目線でも、
- どうやったら「ザッソウ」がたくさん生えるか(後述)
- 口頭やメールでやりにくくても、チャットツール(今どきならSlackとかLINE、ChatWorkあたり)でのコミュニケーションを浸透させるか
的な所で色々と考えさせられました.*5
タスクばらし
個人的には一番好きな考え方(かつ昔からめちゃくちゃ実践してる)で、強くおすすめしてるやつです.
スクラムとかでもそうですが、「目的とゴール(≒終了条件)が明確かつ、現実的に"完了"できる単位に別ける」というのは、生産性を高める一つの重要なやり方です.
それを「タスクばらし」といういい感じに優しい日本語で読みやすく・わかりやすくまとめられてるのは良いなと思いました.*6
タスクばらしをするためには見積もり(≒仕事のシミュレーション)も必要だよ、と言及していてここも素晴らしいと思いました.
大事なのは、「手を動かす前に、頭を動かす」ことです。そもそも頭でイメージできないことは、手を動かしたってできやしないのです。
これホント重要.*7
セルフマネジメント - 管理ゼロへの招待状
管理ゼロの世界は「各々がセルフマネジメントを身につけてこそ」だよ!
ということが後半から書かれているのがすごく良いと思いました、ホントそのとおり.
書籍内で言及されている「セルフマネジメントの3つのレベル」
- 【Lv1】自分に与えられた仕事を1人でできる
- 【Lv2】自分に与えられたリソースで成果を出す
- 【Lv3】自分で仕事を見つけて成果を出す
これは各々の「なぜ」「背景」を踏まえた上で書かれていたのはすごく良かったです.
自分はプレーヤーとして、「縛られる」スタイル(ホウレンソウとか定期的なMTGなど)が基本嫌い*8で、「どうやったら”任せて”もらえるだろう?」をテーマに色々試行錯誤していますが、この辺のレベル感の考え方・区分けが妙にスッキリ行った(≒任せてもらえなかった時期になぜそうなったかのふりかえりになった)のでしみじみと読めました.
幸いにも今は「任せてもらっている」状況なのですが、これに甘えること無く...!という意味で学びを得た感じがあります.
組織を変える
組織を変えるヒント・思想への感想は、@haru860さんがいい感じのエントリーにまとめてくださってるのでそこに譲るとして(注:手抜きではない笑*9).
いくつかある「組織を変える」ヒントの中で、一番刺さったのがザッソウでした.
「ザッソウ」が生える世界へ
「ザッソウ」は「雑談と相談」の略です.
これが重要な理由をこの本ではとても腹落ちする一文で表現していました.
特にコミュニケーションをしているうちに価値が出るような頭を使う仕事においては、雑談と相談はわけないほうがいいのです。
エンジニアとかデザイナー、データサイエンティストあたりはまさに「そうそう!」ってなると思います、自分もそうです.
個人的には昔から仕事中の雑談が大好きで、雑談から生まれたヒント・アイデアで成功した仕事もたくさんあります.
むしろ、上司や先輩に報告や連絡を求められるような仕事こそが地雷ぐらいに思っている(成功することもあるけどむしろギスギスしてしくじるほうが多い)というか体験的にそうなので、この表現は妙に納得しました.
「ザッソウが生える世界」もっと来てほしいです!*10
組織と自分を変えるヒントを手に入れよう(&別の世界線もある)
と、いう意味で「管理ゼロで成果はあがる」はめちゃくちゃオススメです!
管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう
- 作者: 倉貫義人
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2019/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ちなみにこれは雑感的な事ですが、「人の生産性・パフォーマンス向上」という文脈では最近はやってる、「People Analytics*11」という考え方・アプローチがあり、「管理ゼロで成果はあがる」とシンクロしそうな世界で面白いなと思っています.
データサイエンティスト養成読本 ビジネス活用編 (Software Design plusシリーズ)
- 作者: 高橋威知郎,矢部章一,奥村エルネスト純,樫田光,中山心太,伊藤徹郎,津田真樹,西田勘一郎,大成弘子,加藤エルテス聡志
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/10/30
- メディア: 大型本
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「管理ゼロ〜」のように、ホラクラシー的な組織運営のためにアナリティクスするか、はたまた野球の「マネー・ボール」の様に、メトリクスを元に人そのものを入れ替えたり、「管理する」側に倒してやるか?*12
このエントリーでは考えがまとまらなかったので言及しませんでしたが、この辺合わせて考えて何かできればなあと思っています、公私共に*13.
*1:逆説的に言うと、「上司(または先輩・同僚)に変わってほしい」と思っている方も、その思い・思想の差分を取る意味で読むと面白いかも.
*2:なぜなら、「学ぶ」というのはなにかの行動を起こす・今日より明日、明日より明後日を良くするための実践こそ大切だと思っているからです(真顔)
*3:何かをやることで突破口開かないかな?というのは7,8年前から思っててそれでまずやったのがブログ.
*4:っていうのはこの本を読み切ったらわかりますし、アジャイル的な思想だとそういうものかと
*5:し、現職のCTOとしての仕事の3.34%程度をここに費やしてる気がします(いや25%くらいかも)
*6:ちなみに源泉はトヨタ生産方式で、ビジネス寄りだとリーンスタートアップもそうですが、そのへんは興味あればぜひ読んでみると良いかも(超絶におすすめです)
*7:手から動かしちゃうのは何も若い人や新人だけじゃないっていうことです.
*8:報告・連絡の目的やタイミングなどがズレて結局無駄になる,そもそも身内に報告・連絡するならその場でサクッとでエエやん!?って考え方なので.なお、これは報告・連絡を「する視点」もそうですが、「もらう側」に回っても苦手です.
*9:言いたいこと・思ってることをだいぶ先回りして書かれていたので引用させていただきました.はるおさんすごい.
*10:もちろん、「仕事中の雑談っていかがなものか」「うるさいのは困る」という人もいるかと思いますが、明るいコミュニケーションで笑顔作って仕事するのは良いことですし、口頭で雑談しなくてもチャットの部屋などでインタラクティブにやればいいと思っています、まさに「心理的安全性」の話って気がします.
*11:業務・仕事中のあらゆるログ・行動履歴を採取し、統計学などのアプローチで客観的に分析・アプローチを改善する人事よりのアナリティクスのこと.ちなみに元祖は野球(セイバーメトリクスやマネー・ボール)とのこと.
*12:つまり使い方しだいで毒にも薬にもなります、こわいねえ.
*13:People Analytics自体、使い方しだいでホラクラシーだし、ホラクラシーじゃないかもだし...って考えると面白い